侍を語る記

侍を語る記

歴史瓦版本舗伊勢屋が提供する「史跡と人物をリンクさせるブログ」

江戸時代

武功の兄弟、茶を末代に伝えんとす その3

結果、長男の掃部丞久茂・四男の越前守政重ら兄弟による武功は、上林家の地位を決定的なものにした。というのも、天領(幕府直轄地)となった宇治には代官所が設置され、久茂の血統である上林六郎家(上の上林家・峯順家)と政重の血統からなる上林又兵衛家…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その8

その後、世論を巻き込んで湧き上がった旧赤穂家臣への同情論のさなか、佐藤直方(朱子学者)や太宰春台(朱子学者)、荻生徂徠(柳沢吉保家臣)らが処罰論を展開したのは有名である。 それらに共通するのは、浅野長矩が切腹に処せられた直接の罪状は吉良義央…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その7

そして、大石自身、何もなければ平穏な人生を歩めたはずが、赤穂藩に、しかも家老の家柄に、いやもっと言えば武士に生まれてしまった自分の人生をどこか悔やむような思いがあったのではないか。 東京都港区高輪 萬松山泉岳寺 大石良雄墓「あらたのし 思ひは…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その6

五十人にも満たない兵力で挑む、この戦いをことさら有利に展開するため、彼らはさまざまな演出を凝らしていた可能性がある。近隣邸・部外者に対しては、討ち入りの挨拶・火気の始末など、実にあっぱれな仕儀を見せ、結果的に旧赤穂家臣に寄せる同情や人気は…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その5

しかし、浅野長広を擁したお家再興が潰えた時、彼の中から一抹の期待さえもが奪われた。生への執着を捨てなければならない決断の瞬間でもある。元筆頭家老として、また同志盟約の長として、もっとも避けたかった方向に進まざるをえない。筆舌に尽くしがたい…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その4

冷静に考えれば、将軍生母桂昌院の栄誉に関わる式典という場所柄もわきまえず、主君浅野長矩が刃傷に及んだ以上、将軍家の怒りは尤もであり、お家再興など極めて難しい。 願わくば、長矩の弟、長広が小さくでもお家を残すことさえできれば、これ幸いである。…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その2

愛知県西尾市吉良町岡山山王山 片岡山華蔵寺 吉良義央墓そこで、また疑問に思うことがある。大石良雄の本当の狙いは吉良の首にあらず、片手落ちな裁決を下した幕府に対する挑戦だという、いかにもエンタテインメント的な味付けである。 果たして、そうだろう…

演出の忠臣蔵と本音の赤穂事件 その1

時代劇の定番にして、出尽くした感が強い「忠臣蔵」。 浅野側を「善玉」・吉良側を「悪玉」とした明確な勧善懲悪設定のもとで、討ち入った赤穂義士には毎回喝采が沸き起こる。 そもそも、この有名なストーリーは歌舞伎を上演するにあたり、幕府の目を憚って…